目視で行うバイタルサイン測定

バイタルサインの測定を行う際は、体温計や血圧計を使ったり指を使って脈拍を図ったりするのが一般的だが、計測以外にも目視による利用者のバイタルサインを確認する方法がいくつかある。たとえば、皮膚の状態だ。利用者の皮膚や唇をチェックし乾燥が見られるようであれば、脱水症状を起こしている可能性がある。高齢者の中には、喉の乾きに鈍感になったり、尿失禁を恐れてあえて水分を取らなかったりする人がいる。そのため、夏場は特に気づかないうちに脱水症状に陥っているというのは珍しくない。いつもより肌や唇がカサついていると感じたら水分補給を促すようにしよう。

次にわかりやすいのは利用者の歩行速度だ。これは、利用者の身体状況を確認する手段としても良い指標になる。歩行速度でわかるのは、筋力をはじめ、柔軟性やバランスなど。歩行速度、歩幅の大きさ、足の上がる高さをチェックするだけで、利用者の身体機能の状態がわかるのだ。また、わざわざチェックのための業務を増やすのではなく、レクリエーション時や施設内の移動といった日常生活の中で確認しやすいのもポイント。業務の合間にちょっと気にかける程度で対応できるので、ぜひ取り入れてほしい。

ちなみに、男性は80歳、女性は75歳以上で日常生活に何らかの不自由さを感じはじめるといわれている。歩行状態を注視することで、その変化を早期に発見できるとともに、要介護度の再認定や介護予防にもつながるだろう。

バイタルサインの理解して介護を行う

バイタルサインは、利用者の健康状態を知るための基本的かつ重要な情報である。介護サービスを提供する上で、医療職との連携は不可欠なものであり、バイタルサインをしっかり理解することが大切だ。一般的にバイタルサインは、体温や血圧、脈拍や呼吸のことをいい、広い意味では、意識レベルや食欲、排泄の状態や睡眠、神経の反射なども含まれる。

このうち、体温は、脳や心臓など、身体の内部の温度のことを指す。毎回、体内に体温計を入れることは難しいため、実際には、測りやすく、かつ体内に近い温度が得られる部位で測る。基本的には、腋下の中央に体温計を当て、しっかりと脇を閉じて測定を行う。計測時の条件によって体温の値は変わってくるため、年齢差、個人差、行動差があることを知ったうえで、利用者の平熱の把握につとめることが重要だ。発熱は平熱より1度以上上昇した場合であり、主な原因として感染症や脱水、熱中症などがある。発熱した場合は、正しく測定されたかを確認して、血圧や脈拍を測定したうえで、医師や看護師に報告するのも介護職の仕事だ。また、熱が上昇する時期は、悪寒戦慄、頭痛、倦怠感や関節痛などの症状があらわれる。この時期には、掛物をかけたり、湯たんぽや電気毛布などを用いて保温につとめることが大事だ。

熱があがりきったら、全身倦怠や顔面紅潮などがあらわれるので、身体を冷やすようにする。また、熱が下がりはじめたら、脱水症状になる前に、スポーツ飲料やイオンゼリーで、塩分とともに水分補給を行うことが大事だ。加えて、発汗により皮膚が汚れやすいため、清拭で皮膚を清潔に保つようにするのが介護のポイントだ。